魚の棚広報誌 うおんたな18号
魚の棚のお店から仕入れをされている「魚菜酒蔵だいがく」さんの看板娘
浪花 真実さん
魚菜酒蔵だいがくアルバイト。神戸在住 専門学校生 19歳。
将来の夢は、雑誌のスタイリスト、現在、目標に向かって日々勉強中の彼女。
魚菜酒蔵だいがく
明石市本町1-2-46(国道2号沿い・魚の棚中央北口近く)
TEL078-918-8009
<営業時間>
月~土 17:00~24:00(L.O23:30)
日・祝日 17:00~23:00(L.O22:30)
年中無休
明石昼網のお造りや鯛めしをはじめ、国産の野菜や魚介にとことん“こだわり”をもってお出ししています。
毎日入れ替わる60品のおすすめメニューをご用意しております。
お造り盛り合わせ 1,380円~
天然鯛めし(3~4人前)1,650円~
今が旬魚 「目張る」
魚の棚のお店から仕入れをされている明石の老舗割烹杉本の板長杉本氏による旬の魚「目張る」の煮付けの作り方を教えていただきました。ぜひ、ご家庭で作ってみてください。
●黒目張は、竹の子の時期が美味。
いかなごを食べて肥えるので、今のこの時期が旬です。(学生時代のバイト先では、ハマチ(養殖)にいかなごを食べさすといっぺんに太るということで、いかなごを餌として出荷していました。
●活け越しという作業をします。
鯛・平目など、活け州で泳がすことができる魚は、一昼夜活け州に入れて、内臓に残った餌を吐き出させ、ストレスを取り、いい状態にしてから料理します。
黒目張も我々料理屋は、この活け越した物を使います。この作業は技術の良い漁師と魚を丁寧に扱う「うおんたな」の魚屋だからこそ成り立つ一つの技です。
店頭に並んだ魚を買う一般の皆さんは、とにかくお店(魚屋)となじみになることです。対面販売の”うおんたな“こそなじみのお客さんになってください。そうすることで良い魚を手に入れることが出来ます。自分で選ぶ時はよく肥えたものを選んでください。ただ今回の様に”活かってる“(造りにできる状態)の物は火を通すとバラバラになって見映えは悪くなります。煮付け以外にも、刺身・焼き物・唐揚げ・酒蒸しにしても美味しい。
それでは調理にかかります
●うろこ、水洗い(内臓を出す)までは、魚屋でしてくれる。家でもう一度、内臓を流水で洗うときは、軍手をはめエラに手を入れて洗うと取りやすい。
●200g以上の目張るは2つに切ると調理しやすい。
●火の通りがよくなるよう魚の表面に包丁を入れる。
●霜ふり(熱湯にくぐらせ冷水におとす)をして、表面に残ったうろこやぬめりを取る。
●材料がきっちり収まる位の鍋を選ぶ。
●今回約200gの目張に対して、みりん50cc、酒120ccを鍋に入れ、火をつけてアルコールをとばす。出汁(家庭では水でもいい)200cc、砂糖小さじ1.5杯を入れ、竹の子、目張を入れる。目張は頭が左になるように。
● 落し蓋をする。この時、胸ビレ、尾ビレ共に頭の方を向く様に。
この間に何回か火から離し、鍋をゆする。焦げ付かない様に、煮汁と泡で材料を包み込むイメージで。このまま約4分程強火で煮汁が材料全体にまわるようにし、濃口醤油を50cc入れる。この間、あくを丁寧に取る。必ず途中で味見をする。落し蓋を取り、鍋をかたむけながら、弱火にしておたまで煮汁をかけて、煮つめる。約70cc煮汁が残るようにします。
●皿に盛り付けて、木の芽を散らす。
●家庭では、先に煮汁をあわせておいても良いと思います。
●甘いのが好き、こってりしたのが好きなど、色々好みがあると思いますが、あくまでも、まず、失敗のない無難な割合です!
割烹 杉本
明石市鍛冶町3-26
TEL078-912-1254
<営業時間>17:00~21:30
<定休日>毎週日曜日
割烹杉本さんは鯛・たこ・穴子は勿論、その他四季折々のいわゆる“前もの”の中でも特に店主みずから毎日厳選し、一昼夜生簀に放ち、最高の状態になった頃を見計らって料理されている老舗割烹のお店です。
私の味自慢くぎ煮コンテスト(主催●町衆明石)
今年の優勝者「大城さん」レシピ大公開
三月十日開催された春旬祭の中で同時開催された、町衆明石主催の私の味自慢くぎ煮コンテストに於いて、見事優勝された、芦屋にお住まいの大城さんのいかなごくぎ煮のレシピを教えていただきました。
今年は時期的に難しいかもしれませんが、是非来年、参考にしてくぎ煮づくりに挑戦してみてください。
いかなご1kgに対して(用意していただくもの)
●丸大特選濃醤油150cc●丸大特選薄口醤油40cc●白ざらめ400g●みりん50cc●土生姜80g
●かんてんの粉●水200cc●山椒の実(灰汁抜きしたもの)●国産レモン1/2の皮・汁●白ごま
① まずはいかなごの選び方。目の透き通った新鮮なイカナゴ。
魚の棚では水揚げされたばかりの「いかなご」が店頭で販売されているので安心して購入頂けると思います。
(注)購入するのはその日の分だけ。鮮度優先、その日に炊くようにしてください。
② いかなごを水洗いし、しっかりと水切りをします。炊く寸前まで冷蔵で冷やし、鮮度を保つように。
③ 鍋は厚手鍋(7層)26センチ以上の物。
家庭のコンロで出来る限界は最大で1キロです。鍋に調味料を入れ、強火にします。(基本は強火)
④ いかなごは一度に入れず2~3回に分けて、調味料と馴染ませる。千切りにした生姜を入れる。
⑤ アルミホイルにつまようじなどで穴を空け、落とし蓋をする。ぎりぎりふきこぼれない最大の火力で炊き続ける。※泡の中でいかなごを踊らせる。そうすることでまんべんなく、味が染み渡ります。
⑥ 泡に粘りが出てアルミホイルが下がってきたら弱火にします。さらに粘りが出て、煮汁が少なくな れば、火を止めて余熱で水分を無くします。
※必ず箸などを入れず、鍋ごとで、中のイカナゴをかき混ぜる。
⑦ 火を止めてから3~5分さまし、レモンの皮・レモンの汁をかけ、鍋ごと上下に降り、かき混ぜる。
残りの煮汁を切って出来上がりです。お好みで白ごま(皮むきごま)を振りかけてください。
特集!! うおんたなの練り物屋さん
◆子どもからお年寄りまで大好物◆
お店によって特徴があります、いろんな練り物を食べ比べてみてください。
明石屋
明石市本町1丁目5-19 TEL911-4637 営業時間9:00~18:00 定休日:毎週木曜日
現在2代目店主の老舗のてんぷら屋さん。てんぷら、イカナゴくぎ煮、蒲鉾、竹輪などを取り扱いしています。
てんぷらは自分たちが食べて美味しいもの、自信を持っている商品のみを販売しています。一枚一枚手作りをし、添加物を極力使わないように工夫しています。特に油にこだわり、厳選した植物油で丁寧に揚げ、魚の風味と歯ごたえを残しています。店内にはカウンター席もあります。
人気商品ベスト3
1. タコ食べたイカ <180円/1本>
(登録商標にも登録されている一番人気商品)
2 .特製タコ天 <380円/1本>
(タコを贅沢に使ったタコがギッシリの天 ぷら)
3. 鯛天 <300円/1本>
(すり身に鯛身を使った上品な味の天ぷら)
白川南店
明石市本町1丁目4-17 TEL911-2689 営業時間9:00~17:00 定休日:不定休
歴史は古く、昭和7年のおばあちゃんの代から営まれている老舗です。
練り物製品で人気の丸天は、たこ、いか、あなご、お好み、えび、ふぐ、など季節によって種類が変わります。店頭には常に6種類を販売しています。全種類買って、味を楽しむのもいいですよ!
練物のほかに、お惣菜、イカナゴくぎ煮、ちりめん、たこせんべいなど色々販売しています。
人気商品ベスト3
1. やわらかたこ天<50円/1ヶ 300円/7ヶ入>
(すり身やわらかめ。細かく刻んだたこ・しょうが・ねぎが入ったたこ焼き風)
2. 丸天(たこ) <180円/1枚>
(すり身にこしがあって揚げかまぼこに近い)
3. 上 天 <110円/1枚>
野島商店
明石市本町1丁目2-11 TEL912-4456 営業時間10:00~17:30 定休日:毎週木曜日
大正時代より創業90年。お店の奥の工場で、石臼で魚をすり潰し、大がまで1枚ずつ心を込めて手揚げしています。人気No.1の平天は、ちょっぴり甘く懐かしい味。14時頃には毎日必ず揚げたてアツアツの平天が店頭に並びます。出来立ては、ほかほかでふわふわ、やわらかくてもっちり。ぜひ、お越しいただいて、揚げたての平天をご賞味下さい!やさしい甘味と、ふわふわの食感、これはハマってしまいます!
人気商品ベスト3
1. 平 天 <100円/1枚>
(甘くてやわらかくてもっちり)
2. たことしょうがのダンゴ <150円/1本>
(細かく刻んだ蛸がぎっしりのタコ団子)
3. 真空パックのちくわ <400円/1本>
(観光客の方に大人気)
ハセ蒲鉾
明石市本町1丁目1-17 TEL913-0345 営業時間9:00~17:00 定休日:不定休
原料を吟味して伝統の味を守り、ひとつひとつ手作りにこだわっています。お店の奥でつくられる美味しさの秘密は、石臼ですり身を練っていること。石臼で練ることにより、もっちりとコシのあるすり身に。
魚の棚で唯一の、「上竹輪」製造所のハセ蒲鉾。
昔ながらの天ぷら、竹輪、蒲鉾など伝統の味が並ぶほか、魚ミンチフライやタココロッケなど、各種揚げ物もたくさんあります!
人気商品ベスト3
1. 上天(天ぷら) <120円/1枚>
(生魚の味が凝縮された歯ごたえのある天ぷら)
2. 上竹輪(竹輪)<220円/1本>
(お酒のあてにもってこい。レンジで少し温めると歯ごたえが出る)
3. たこ天(天ぷら) <250円/1枚>
(ブツ切りのタコを入れ込んだ天ぷら)
三ツ星蒲鉾
明石市本町1丁目1-11 TEL911-2525 営業時間8:00~18:00 定休日:不定休
創業60年の老舗。
練り製品の種類はびっくりするほど豊富!
魚の棚で練物のお店が並ぶ中、定番商品に付け加え、他にはないような変わったおもしろい商品の開発を心がけています。
最近の練物は脇役といったように思われがちですが、スナック感覚で手軽に美味しく食べられるので、若い方にも是非どうぞ!天ぷら・蒲鉾のイメージが変わると思いますよ。
人気商品ベスト3
1. 明石上平天 <120円/1枚>
(甘味が強く、子ども~年配の方まで大人気!)
2. たこ蒲鉾 <400円/1枚>
(魚のすり身とたこのブツ切が合っていて大人気)
3. まだこ丸揚げ <600円/1本>
(マダコを丸々1匹、人参と玉葱、魚のすり身の生地にからませて揚げています)
マップ製作:海路畦崎さん
まぐろ屋 海路 明石市本町1丁目1-22 TEL918-0011 営業時間 8:00~17:30 定休日:1月1日~4日
大きなマグロの看板のとおり当店自慢は天然まぐろ。また、明石の活生たこ、むしたこ、ひらめなどさまざまな新鮮な魚介類を販売しております。
魚屋一直線
僕は家業の魚屋を継ぐ前はサラリーマン。
もともと気性の荒そうな魚屋なんて気の優しい?僕には向いていない。大学の時、京都で下宿し、その後も僕は僕でやっていこうとサラリーマンになる道を選んだ。
僕が入社したのは某大手スーパー。そこで配属になったのが鮮魚部。偶然ではない、おそらく人事課長の個人的な配慮があったにちがいない。
ただ、僕としてはよもや大学を出て、長靴を履き包丁を持ってまな板に向かうことになろうとは思いもしなかった。しかも、当時のマネージャーはかなり厳しく、怒られてばかりの毎日。会社の帰り道、「やってられるか!」と、やけ酒を飲みたくても、そのお金すら財布に入っていない、そんな虚しい毎日。ただ、それも今にして思えば貴重な経験である。大手企業の魅力というのは、なんといっても組織力。企業に憧れて入社し、いずれは大きな仕事を任されたい、そんな思いがあったのは、心のどこかで親父を意識ていたのかもしれない。
そんな親父が病で倒れ、僕が家業を継ぐことになった。
ところが、いくら鮮魚部にいたとはいえ、扱う魚もやり方も、そしてなにより体質がまるで違う。別世界に来たようだった。どうしても馴染めない、戸惑うばかり。全てがリセットされた。家業についた時、既に親父は闘病生活で店には出られない状態。そして約一年後、六十才という若さでこの世を去った。まだ何も分からない僕がいきなり社長になったわけだが、当時、親父の片腕として店を切り盛りしていた腕の立つ番頭さんがいて、その人を中心に店は上手く回っていた。つまり僕の社長というのは肩書きだけ。
僕にとって家業を継ぐとはどういうことなのか。自らの思いで描き、運営するということではないのだろうか。その上で責任とリスクを背負わなくては意味がない。今もその思いは同じだ。それこそが個人商店の面白さであり、企業では味わい難いもの。それができないのであれば、僕がここにいる必要はまったくない。何一つ自分で試すことなく、何もできない、ただの良い人で終わってしまう。それでは納得がいかなかった。事実、影で嫌みを言ってる人もいたようだ。既にいる従業員も親父が雇った人たちで僕の方を向いていない。「まだ遅くない、ここを辞めよう」そう思った時期もあった。
ここでやっていく(闘っていくといった方がいいかもしれない)には、どうしても僕自身の片腕が必要だった。そこで年も同じくらいのかつての同僚を引き抜いた。もちろん会社を辞めるということがどれだけ大変なことか充分に分かっていた。しかも彼は既に昇進し責任のあるポストについていた。その彼が今も僕の片腕として頑張ってくれている。もちろん、彼自身が描きたかったものもあるにちがいない、それができるだけの能力も備えていた。しかし、それをあえて表に出さず、従業員として僕がやろうとしていることに理解を示してくれた。それがどれだけ心強かったことか。
平成八年に行った新店舗の建築はそんな彼の支えがあったからできたのかもしれない。
新店舗建築はそれまでにない大きな取組だった。これまでの仕組みを一から見直すためには、旧店舗を全て解体し新たに店舗を建てる必要があった。ただ、そのためには、経験もまだ浅い僕が、銀行から億の付く資金を融資してもらう必要があった。
当時、魚の棚はかなり潤っていたというものの、不安はあったし、母も当初は賛成とは言い難かったようだ。
新店舗が完成した頃から、魚の棚はこれまでにない厳しい時代へと突入していった。過去
にない経験、周囲の状況も目に見えて悪化している。
借入金の返済というものが、まるで追い打ちをかけるかのように大きくのし掛かってきた。返済を終えた今だから話せることだが、かなり弱気になったこともあった。そんな時、支えてくれたのが家内だ。「二人とも元々サラリーマンやん、ダメになったら元のサラリーマンに戻ったらええだけのこと、私ももう一度外で働く、そんなことなんともない」そう言ってくれただけでもどれだけ励みになったか。
そういえば、家業を継ぐことになった時も、家内はそれまで務めていた会社を辞め黙って僕についてきてくれた。(余談だが家内の出身は京都で大学の後輩、ちなみにサラリーマン時代は、家内の給料の方が僕よりよかった。)店の中では嫌なこともずいぶんとあった、苦労をかけた気もする。それでも、いつも僕に理解を示してくれた。この支えがあったからこそ、小さいなりにもなんとかここまでやってこれた。この紙面をお借りして一言「ほんとうにありがとう」。
まだまだ語りたいことはあるが、紙面に限りがあるので最後に、サラリーマン時代も含め魚に携わってもう25年以上になる。
僕自身も店のあり方も、そして魚の棚や時代背景もずいぶんと変わった。
今、店が扱っている魚は、冬の一時期を除きその殆どが前物(明石物)。しかし、最初からそうではなかった。「つながっている」ということを意識し始めた頃から自然とそうなったのかもしれない。魚の棚をはじめ松庄もそれは先代が築き上げてきたもの。きちっとしたレールが敷かれていたからこそ、今こうやって僕の様な者でもなんとか商をさせて頂いている。
魚屋(販売者)と漁師(生産者)とて同じだ。ここでいうところの漁師とは明石の漁師のこと。
元々僕はスーパーの鮮魚部、前物に対する意識など殆どなく、むしろ他地域の魚に目が向いていた。漁師は顔も見えない異業種の人でしかなかった。ところが、今は毎日浜へ出向き、直接、漁師を目にする、時に話をすることもある。いわば同じ明石で生業を行う者同士。明石の漁師が獲ってきた魚を明石の魚屋が売る。単純なことだが、それが僕にとってのつながり。他にもっと儲かる方法はあるのかもしれない。でも、それは僕に与えられたものではない気がする。他の誰かがやるだろう。
魚の棚は漁港まで目と鼻の先の距離、この地の利はどんなに大手が真似をしたくてもできるものではない。産地から離れたスーパーで明石物を売ることがどれほど難しいことなのかを経験したからか、このメリットの大きさを痛感する。これだけの土場は他にはない。明石は産地であり消費地でもある。それがこの街の特徴であり財産である。だからこそこの財産を守り育てるのだという共通の認識を魚屋と漁師が共有することが大切だと思う。
この先も魚の棚に身を置いて、お客様が明石ならではの食生活を楽しんでいただけるよう、微力ながら尽力していきたい。
文・松庄社長 松谷佳邦